大正ロマンもしくは昭和レトロっぽい映画館が舞台のお話。
大正ロマンもしくは昭和レトロっぽい映画館が舞台のお話。

大正ロマンもしくは昭和レトロっぽい映画館が舞台のお話。

92/1000「幻想映画館」堀川アサコ

主人公は女子高校生の楠本スミレです。楠本スミレは電車を降りたところで父親が女性といるところを見つけてしまって、後を追っていくうちに「ゲルマ電氣館」という古ぼけた映画館に迷い込んでしまう。

この映画館の支配人はサルバトール・ダリのような髭をつけていて、映写技師の有働くんはダブダブのシャツと汚れたジーンズを履いている。事務所には20才前半のボディコン美女の真理子さんがいて。映画館の中には「ウラウラ」という駅裏商店街音頭の宣伝の歌が聞こえている。

スミレが働きはじめたこの「ゲルマ電氣館」を舞台に物語は展開していきます。

これは現代の話なのだけど、読んでいるといつの時代の話だろうと思ってしまいます。スミレには幽霊が見えたり、有働くんに一目惚れしてたちまち恋に落ちてしまったり、そういうところが大正ロマン的な空間をつくっているのでしょう。

幽霊が出てくる話なので本当は怖いはずなのですが、タイトル通り幻想的な物語になっているのは著者の筆力と文体でしょう。これを読んだ後は前作の幻想郵便局を読んでみたくなってしまいました。

hontoで 596円。kindleでも596円。hontoの本文では表紙がでてこないのでタイトル部分の写真で。