S-Fマガジン 1972年3月号
S-Fマガジン 1972年3月号

S-Fマガジン 1972年3月号

「S – Fマガジン 1972年3月号」

写真はS-Fマガジン1972年3月号です。

「S」と「F」の間にハイフンが入っていますが、今これを書きながら気が付きました。この号は私が高校生の時に始めて買ったS-Fマガジンなのです。

未だに後生大事に持っているのは、小野耕世のコラムが読めることと、藤本泉の短編が載っているからなのです。

小野耕世氏はここでのペンネームはまだKOSEIなのですが、連載のコラムは「SFコミックスの世界」というタイトル。アメコミの情報なんてほとんどなかったこの時代ではこのコラムを楽しみにしていた方は多かったと思います。それまで知らなかったマーベルのアメリカンコミックを読んでみたいと思っていました。

その後大学生になって、とかに出て、新しい世界に次々と刺激を受けるようになるのですが、当時の田舎の高校生は、まだ見ぬ大きな世界があることを知らなかったのです。小野耕世が関わっていた雑誌に「Woo」という雑誌もありました。何冊か買った覚えがありますが、売れなかったのかすぐに廃刊になってしまいました。これも探せばどこかにあるはずです。

さて、このS-Fマガジンにはフランスで失踪して行方しれずになった(という)謎の作家、藤本泉の「ひきさかれた街」が載っています。これは東京がドイツのベルリンのように東西に分割統治されているという話です。彼女以外にこういった物語を書かなかったのは不思議です。内容がまた、当時の高校生には刺激的でした。

藤本泉は「呪いの聖域」で1976年に直木賞、1977年に「時をきざむ潮」(テレビドラマにもなりました)で江戸川乱歩賞をとっているので、今では知っている方も多いでしょうが、私はこの号ではじめて知りました。1978年に早川書房から出た「東京ゲリラ戦線」(1968年)は後の推理小説(これも他にはない雰囲気があって好きなのですが)、以上にその新鮮なテーマで「ひきさかれた街」同様に、ものすごい衝撃を受けました。

また平井和正の「魔女の標的」という短編も載っています。これもそれまでに読んだことのないもので、印象が深かったのを覚えています。これ以降買った号も隅から隅まで読んでいて、それぞれの号にそれなりに思い出があります。

ジーン・ウルフとかトム・リーミイを知ったのもSFマガジンだし、大学に入った年に大阪のファンジンに参加したのもSFマガジンの影響です。せっかく参加したファンジンは水があわなくて、会合に3回ほど参加してやめてしまいましたが、今となってはいい思い出です。

もし古本屋でこの頃のS-Fマガジンを見つけたら、買って読んでみてもいいかもしれません。SFの拡散と浸透なんていうことを言っていた、古き良き時代の話ですね。

1972年 早川書房 定価280円。内容はこちらが詳しいので、書くまでもないかなと思います。

奇妙な世界の片隅で 天使の誘惑  トム・リーミイ『サンディエゴ・ライトフット・スー』

では。