運命と共に生きる明るい女性の物語
運命と共に生きる明るい女性の物語

運命と共に生きる明るい女性の物語

83/1000「KI・RI・E ~はじまりは夏のおわりから~」吉田裕美

 

「スティグマだ。間違いない」  声を高くして言った古志さんの目は、鱗でも落ちたかのように輝いて見えた。明は間髪を入れずに「スティ、グマ? それなんですか」と訊ねる。 「聖痕。昔先祖が、神様とか神性を帯びた聖なるものと関係を持った証。末裔の体に普通とは違う特徴が現れるのは、聖なるものの血を引いていますよっていう徴と考えられているんだ。

タイトルにある「KI・RI・E」というのは主人公の女子高生の名前だ。漢字で書くと「稀莉栄」。親友は「明」。相撲をやっている男の子は「懐愛」。これ読めません。で、この男の子の相撲の描写も細かな動きが相撲の実況のように詳しく手に取るように書かれていてすばらしい。

明るく元気な高校生活を送るキリエには先祖にまつわる伝説を探る過程でそれが今の自分の特異体質につながっていることを覚ります。ありふれた歌謡曲のような本のタイトルですがきゃぴきゃぴした軽薄さはないですね。テーマは重いのだけどそれを感じないんだよね。読後感もとてもいい。

謎を解き明かしていく過程が簡単すぎるのが気になるけど、ここを深く書きすぎると半村良の伝奇小説になってしまう。なのでこの程度でいいのかも。

先祖を恨むことなく、運命を受け入れた「稀莉栄」も、それをまるごと受け入れた「懐愛」も素晴らしい。

これが著者のブログのようです。sogno嬢ちゃんのジョンジョン日記
プロフィールには『寝ても覚めてもお相撲お相撲!お相撲大好き女子です。』と書かれてます。それでか!。

 

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