world where it disappears

下関私生活

*

過去の自分は時として、導となる/昨日の僕が僕を殺す

   

624/1000「昨日の僕が僕を殺す」 太田 紫織

札幌の高校生ルカはあることがきっかけで小樽の高校に転校する。のんびりとした校風の学校、クラス委員長の麦澤が向けてくれる笑顔。 下り坂、街の向こうに見える海、ここで描かれる小樽の風景は春の日差しのように暖かく優しい。

ルカは叔母が好きだった欧州パンの店「フレープ・ソーリ」にリンゴのパンを買いに行く。「フレープ・ソーリ」は古い煉瓦造りの倉庫を改造した店で、リンゴのパンは叔母の49日の墓前に供えるため。

あらすじを見て買った本なのだけど、あやかしの出てくる物語という事を忘れてました。あやかしが出る物語では妖怪が出てきて不思議なことや怖いことが起きる。この表面上はのんびりとしたルカの世界は、叔母の49日である2月4日の前日、節分の日にあやかしの世界に変転します。

「ええ、節分の日に、四つ辻に願い事をするんですよ。 炒った大豆を年の数だけ小銭と一緒に紙に包んで、夜に家の近くの四つ辻に行って。そうして豆の入った紙包みを、身体にこすりつけてから息を吹きかけ、後ろ向きで放り投げるんです。そうすると、四つ辻の神様が願い事を 叶えてくださるそうなんです」位置:527


これは物語の中の話だけれど、現実では北海道では四つ辻に願い事をするのでしょうか?。私の記憶では山口県でも節分には年の数だけの豆を半紙に包んで、三叉路に行ってお願いをしていました。人に見られないように、暗くなってから出かけました。 私の子供の頃の話なので50年くらい前、誰に聞いても来たことないと言われるので、廃れてしまった習慣だと思います。

子供心に夜に誰もいない三叉路まで出かけるというのはなんだか怖かったです。

ルカはこの後人間の世界から半分あやかしの世界に入ってしまう。信じていいのか 「フレープ・ソーリ」の人たち(あやかし)に助けてもらいながら生活を続けていきます。ルカがあやかしになることはありません。

それだけに、この後ルカはどうなるのか、あやかしにされてしまうのではないか、どうこの恐怖から逃れるのか、心配も増えます。 いっそ吸血鬼なり天狗になってしまってその世界で生きていったほうが異世界の冒険譚になって楽しいと思うのだけど。

小樽の描写が美しく、ルカは優しく、おどおどろしさは適度、ロシアのパンのこともわかるし、楽しく読める小説でした。

読書時間240分。太田氏の著書「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」シリーズは積んだまま未読。

では。

 - ぼくの読書法

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