2/1000 「残虐器官」伊藤計劃
「……ヒトの脳にはあらかじめ残虐性が埋まっている。それ自体は驚くべきことじゃない。こんな虐殺言語を持ち出さなくたって、人間の脳は殺し、盗み、犯す機能をその内に抱えている」
この数日朝が涼しい。
風も強いので台風10号の影響だと思うのだけど、それと同時に出勤時の空がだんだん暗くなってきている。暑い暑いと思っていたけど、そろそろ秋が近づいてきているようです。毎年夏の終わりには蜩が鳴いてうるさいくらいなのだけど、今年は鳴き声を聞きません。なぜでしょうね。
さて、前後するのだけど、5年間で1000冊よむぞプロジェクトの2冊目は伊藤計劃の「虐殺器官」。この本は早くから電子書籍として出ていて、私が買ったのも2012年12月3日でした。それなのに読んでなかった。一体何をしていたんでしょうね。
物語の最初の1行で、ちいさな女の子の死が描かれます。主人公はアメリカ政府の殺し屋で、子供でも躊躇なく殺すよう訓練されている。外の世界では各地で虐殺が起きていて、その主犯者のジョン・ポールを再三暗殺しようとするのだけれど逃げられている。
内の世界では母親の安楽死にサインしたことで母親殺しで自分を責めている。この内側の世界は虐殺の主犯ジョン・ポールと会話することでさらに壊れていきます。
近未来の世界を描いたSF。スペースオペラと違って、近未来とはいえ現実感がありますね。今そこで起こっていても不思議はない物語。漫画やアニメになるのもわかります。
虐殺が近代兵器ではなく、言葉からといのはありそうで怖い設定。いや情報操作という言葉で置き換えるとありうる可能性は高い様な気がします。
エンディングはどうなるのだろうと思ったのだけど、これしかないというエンディング。読み終えるのに時間はかかったけど久々に読み応えのある小説でした。
伊藤計劃氏は2009年に34歳で亡くなられてます。「虐殺器官」は2007年のデビュー作です。残念ですね。
kindle 583円。買った時は300円