39/1000 「七日目は夏への扉」にかいどう青
最近多いタイムリープもの。
残念ながら、この世界には楽しいことよりも、つらいことや、悲しいことのほうが少しだけ多く転がっている。
この物語は福永武彦の「草の花」からの引用で始まっていて、福永武彦を愛する私にはそれだけで得点は高いです。
物語の中ではこの冒頭の言葉を思い出すようなことはないのだけど、キーワードはこの冒頭の言葉にあります。福永武彦の物語には孤独がつきもの、その象徴がここでの「寂しい」という言葉。
主人公は女性翻訳家の美澄朱音(みすみあかね)。「おい!」とか「バカ」とかの男ことばを使い足の指で扇風機のスイッチを入れる。姪っ子と一緒に暮らし、パンクロックを愛している。
朱音は学生時代の恋人だった「森野夏樹」が自動車事故で死ぬ夢を見ます。
それがすべての始まりで火曜日。タイムリープのきっかけは寝ることで、目が覚めるとランダムに1週間のどこかに飛んでます。
火曜日、月曜日、水曜日、日曜日、木曜日、水曜日、金曜日、木曜日、土曜日、そして繰り返される火曜日。
タイムリープの原因は「なんで、わたしだけやり直しを許されたのか、そんなことは知らない」そうです。これはこれでいいのかな。原因がたわいないことだと興ざめるからね。
何度何度も繰り返される火曜日。そして何度目かついに時間軸を突き破って死ぬはずだった森野を助け出します。教師の森野も、森野を刺した教え子の桐矢麻友香も孤独な存在です。眩しいオパールみたいな朱音が死の孤独から彼らを救い出したんですね。ハッピーエンド。
kindleでは745円