53/1000 「未来からの贈り物: 短編小説集」 幸田 玲
ぜひ続きを書いて欲しい。未来がとても気になるので。
あれから十七年が過ぎて、私は二十七歳になった。でも、そのときのことを和也に話すつもりはない。母が乳がんで亡くなったことを話すと、和也は連想して余計に落ち込んでしまいそうな気がするからだ。
すごくいいんだよね。何が、というと。
読み進めるにつれて、情景が色鮮やかな映像となって目の前に浮かんで来るのです。まるで言葉に色が付いているみたいです。
過去形と現在形の使い方もうまくて、意識はしないのだけど言葉が絵に変わる。
ところが、これからどうなるのか気になっていると、唐突に物語が終わって、軽いショックを受けるのです。
あえて言います。お願いだから続きを書いて欲しい。
この本は短編集で10の物語が収められています。そのどれもが長編の切り取られたひとつの場面のようです。「月曜日の夜に」ではフランスのある映画を思い出しました。
短編集のタイトルになっている「未来からの贈り物」は視点を変えて同じ場面を同時に描写してあるけど、言葉が少し変えてある。
「東京物語Ⅱ」これは男のうじうじしたところがいい。思い出の場所で思い出を辿るところ、想像するだけで泣けてきます。男ってこんなもんです。
言葉の使い方がとても丁寧なのだけど作った感じはなくて優しい雰囲気が漂ってます。作者の人柄かな。
余韻が残る物語なので先を想像しないではいられません。現実的だけどスペキュレイティブ。
kindle で112円。