86/1000「螺旋階段の行方 The future of the hominization」沢川沙樹
圭子に言われるまで気づかなかったことがあった。俺はいつも淳子の影を求めていたのだ。何かにつけ過去にこだわり、自らを過去の虜囚と思いこんでいた。それが圭子の登場によって過去が現実として現れた。俺にとって圭子は淳子そのものだった。純子のクローン、圭子。純子のクローン、淳子。
本の説明ではパラレルワールドと説明されているけど、近未来といわれた方が入り込みやすいです。パラレルワールドっぽいところはあまり感じられません。
舞台は第二次世界大戦で日本が勝利した世界。後に帝都維新と呼ばれる内戦が勃発し、クロノイドと戦ったのが主人公の神代怜。その戦いの中で神代怜が愛していた(純子のクローンの)淳子を失ってしまう。
戦いは終わったのだけど1万人ものクロノイドが街に潜んでいる。
神代怜の前に現れた圭子は淳子のクローン。淳子は死んだはずなのに目に前にいる。クローンなので全く別人なのか?。圭子もまた自分のアイデンティティがわからなくなる。神代怜は圭子は圭子として愛しているというのだけど。
物語の背景、神代怜の過去は、かつての戦友の会話や夢の中や思い出として語られる。だいたいのことがわかるのは物語の終盤になってから。戦いの場面は少なめ。
これは戦いの物語と同時に、心とは何なのか?、愛とは何なのかを問いかけてきます。螺旋階段というのは人間、そのコピーとしてのクローンやクロノイドのDNAの塩基配列のことを表しているのだと思うのだけど、主人公の行方をも表しているんだろう。
3章に分かれていて長い物語です。原稿用紙800枚。
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