world where it disappears

下関私生活

*

自分だけじゃ足りないもの

   

寒い。とても冬らしい冬。テレビのニュースでは最高寒波の襲来と告げている。

雪は積もってくると地上の汚れを覆い尽くして、世の中を美しく見せてくれるので本来大好きなのだけど、自動車通勤に困るので最近は好きではなくなりました。仕事に行かなくてよいのなら心穏やかに見ることができるのだけど。

着込んでも、ホッカイロを貼っても、手袋をしても寒いものは寒いです。コートの襟を立て首をすくめる、背中を丸めるて風を避けるようにせかせかと歩く。車に乗ってエンジンを掛けてヒーターを全開にする。でも寒い。

地面に雪が渦巻いて、ライトには雪が降り続け、車はのろのろとしか進まず、うんざりしながらも事故をしないよう神経を尖らせて前を見据える。それでもやっぱり寒いものは寒い。

就職して初めての瀬戸内の小都市の冬も、風がとても冷たかった。足元から冷気が体を包む。ホテルを出て肩を並べて駅へ歩きながら心底暖かいコートが欲しいと思っていた。打ちひしがれて帰ってきた故郷、初めての職場の商品搬入口では、吹き込む北風に小雪が混じっていた。伝票を持つ手があまりに冷たくて、冷蔵庫に逃げ込んだ。何度も軍手で鼻水を拭った。思い出しても冬が寒いと思ったのは、ここ30年くらいでこの2回くらい。

久々に寒い。

242/1000 「君の膵臓をたべたい」住野よる
その変わったタイトルで印象づけられた、ベストセラーで、映画にもなった小説。
典型的なボーイミーツガールの物語なのだけど、かろうじて恋に落ちないのは、予め死が眼の前にあるからだろう。そのときにできるだけ感情を抑えようとしているからだろう。
死の影に怯えながらも明るく元気で社交的な(ふりをする)女子高生山内桜良(さくら)と、同級生で正反対の性格、自分の殻にこもり根暗で友達のいない主人公、僕こと志賀春樹。
二人は遅咲きの桜の咲く頃、病院で出会い、夏の終わる頃までの4ヶ月間の桜良と僕の交流が始まる。焼肉を食べたり、新幹線で旅行に行ったりする(地名は出てないけど博多、太宰府)。ホテルで「真実か挑戦ゲーム」をやって、少しづつでも二人の心がひらいていく。桜良の僕の呼び方は「地味なクラスメイト」くんから「秘密を知っているクラスメイト」くん、「仲のいいクラスメイト」くん、「仲良し」くん、に変わっていく。
まだ時間があったはずなのに、病院を退院してまだいくところがあったのに、桜良は待ち合わせの場所に行く事ができず、突然死んでしまう。これはずるい。
死ぬことが目的地なのに物語自体は暗くない。それどころかとても明るい。きらきら輝いている。楽しく読める。
物語の最初から死が決まっているので読者を泣かせるためのお膳立てはできていて、哀しくならないぞと構えていとのだけど不覚だった。

243/1000「そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート」はやみねかおる
江戸川乱歩の怪人二十面相へのオマージュ作品。いい雰囲気が出ている。自称名探偵夢水清志郎が駄目な男という設定、遊園地から子供が消えるという仕掛けがレトロっぽくていい。

244/1000「水曜の朝、午前三時」蓮見圭一
1970年の大阪万博が舞台。親の決めた人生(結婚)を拒否して自ら万博のホステスとなった自立した女性が、職場で出会った男性と出会って恋をする。児玉清氏絶賛ということなのだけど、恋愛小説としては燃え上がりようがもの足りない。恋ていうものはもっともっと気が狂いそうになるものだよ。万博当時は中学生で2回万博会場に行っている。大学は万博記念公園の横にあって毎日のように太陽の塔を見ていた。当時の雰囲気を思い出してとても懐かしく読んだ。タイトルの「水曜の朝、午前三時」は別れを歌ったサイモンとガーファンクルの同名の曲からとられていると思います。

 

 - あまたの声五月雨のごとく, ぼくの読書法

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