今日のBGMは Gareth Emery 。ライブなので長く楽しめます。
今の室温は26.7度。こんな涼しい盆は生まれて初めてです。外からは雨の音が滝の流れ落ちる音のように響いてきます。山口県や福岡県には大雨の警戒レベル3が出ています。仕事に行かれる方は事故にあわないよう気を付けて出かけてください。
さて、今日も読書の話です。SFです。
荒巻義雄「柔らかい時計」。この本は全集の第1巻でありながら最後に配本されたもの。買ったときの価格は3200円+税
紙の本です。この本は分厚くて重たいので手にもって読むのはやめたほうが良いです。紙質が良いので経年劣化はおきにくそうです。蔵書としては最適です。紙が光を反射しやすいので照明の下では読みずらいです。紙よりはアマゾンの電子書籍で買うのが良いと思います。アマゾンでは2500円です。
珍しいことにアマゾン以外の電子書籍書店では売っていません。電子書籍の取次ぎを通していないのでしょうか。彩流社ってあまり聞いたことないですし、と思って調べてみると「マーク・トウェイン全集」などで有名な出版社ということでした。
表紙に書かれているメタSFというのがどういうものかわからないのですが、SFには間違いありません。
その日、熱帯市でぼくは靴にされたミス・トイと再会した。
トロピカル
本を読むとき、文字を読んでいるはずなのに頭の中にはその場面が絵として頭の中に浮かぶのですが、この本の場合はその絵の間からわたし自身の妄想が次々に湧いてきます。
「トロピカル」の引用はこの物語の1行目の文章です。
ここでひっかかります。
「熱帯市」て何?。
タイトルが「トロピカル」だから熱帯が出てきても不思議はありません。熱帯で思い浮かべるのはジャングルやスコール、太陽、汗、マラリアといったもの。行ったことがないのでテレビや映画や写真で見た景色が浮かびます。
ここまではまだ受け入れられます。
が、次に「靴にされたミス・トイ」と来るともうだめです。ミスなので大人の未婚女性だと考えられますが、それが「靴にされた」というのはどういうことなのでしょうか。そして再会とは。ミス・トイになのか靴になのか、いろいろな物にされたミス・トイになのか。
ミス・トイはきっと死んでますね。でトイなのでおもちゃになってる。
この物語が単純に時間局員が吸血鬼を片付けて仕事をまっとうする話だったらは話は簡単。まるでハインラインです。
ところが主人公は吸血鬼と仲良くなっちゃっうんですね。そしてこの吸血鬼に紹介されてセックスしたミス・トイを愛してしまうのです。好みの女性だったからセックスする。これはあり得ますね。
セックスしたから愛する。未来人にとってセックスは特別なものだからとはいってもこれはちょっと安易すぎないか。
未来の生殖は試験管の中で行われるので生身の接触はうまくできないことの方が普通で、普通はセックスはフェチシズムに偏ってるということですが。そういう彼に愛という感情は生まれるのかな。
主人公にとって愛したミス・トイが靴となることで、主人公のフェティシズム=愛が全開。主人公にとっては生きてる!って感じでしょう。
そして現実が溶け出して主人公の心と一体化します。主人公の心の変貌によって世界も変貌していきます。その変貌した世界の中で主人公は相変わらず物となったミス・トイを愛し続けます。
わけのわからんこういう話好きだわ。筒井康隆の「国境線は遠かった」より以上にシュールです。
では。