Eydís Evensen – Full Performance (Live on KEXP at Home)
松原は大手新聞社の政治部の記者。小さい頃から「お父さんのようになりなさい」といわれて育った。こういう教育方針よくあるような気がする。
私立小学校の受験に失敗して中学、高校と地元ではトップレベルの進学校をでたけれど父親が卒業した国立大学に入れなかった。これもよく聞く話のような気がします。
当然就職も大手新聞社ではなくてようやく滑り込んだ出版社。親を越えられなかった子供の悲哀。自分中心でできないくせに理想ばかり高い男のできあがり。当然「仕事は暇で、つまらない。それ以前の問題として、意味がわからない」
さくらは松原をこう思います。
松原さんは、彼の理想とするわたしと一緒にいるように思えた。現実のわたしは、彼の理想に捻じ曲げられていく
さくらは長野県から東京に出てきてマッサージ師をしています。少し優柔不断だけど28歳の健康的な女性です。松本市に戻って治療院を開業したいという夢を持って働いています。
さくらは短大を出て地元の松本市で23歳まで信用金庫に勤めていました。窓口業務中に高齢者のストーカー被害にあって信用金庫をやめます。東京でマッサージ院でアルバイトをしながら専門学校に通って資格を取ります。
松原に出会う前にもストーカー被害にあってますが、それがあってもなくてもこういう感じで頑張って生活している女性は珍しくはないはず。
畑野智美の文章はねちっこくなくてとても読みやすい。やわらかくてしなやかな文章ですね。さくらのアパートから見える桜の描写はとてもきれいです。
なぜ物語のタイトルが「消えない月」なのかというと
月はいつも、僕の正面にある。
追いかけても、追いかけても、追いつけない。(松原サイド)
月はいつも、振り返るとそこにある。
どこまで行ってもついてくる。(さくらサイド)
松原にとってさくらが月で、さくらにとって松原が月なのです。永久に追いつけない、そして永久に逃れられないものの象徴。
最初はとても気持ちよく読めていました。松原と出会って付き合うようになるまでは。
松原はさくらとの出会いを運命と感じて自分の理想に向かってさくらを束縛しようとするのです。このあたりからとっても気分が悪くなる。
「男の連絡先、全部消すからな」松原はさくらのスマホから男性の連絡先をすべて消します。
少しずつ狂気が見え始めてきます。論理がおかしいです。気持ちが悪いです。気分が悪いです。色々とレビューを読んでも気持ち悪いとか、おぞましいとか書かれています。
理解できません。なんなんだこいつは。
途中何日か読めなくて放置していました。そして少しづつ再開。やっと最後まで読めました。
ストーカーはこの本のように男の場合もあれば女の場合もあるよね。ストーカーのすべてがこんな風な思考をしているとしたら逃れるすべはないです。警察も当てにならないし自分で自分を守るなにかの武器を身につけておく必要がありますね。
畑野智美のnoteには「仕事とバイトで、スケジュールがどうしようもない感じです。」と書かれているので、ぜひ本を買ってあげてください。彼女の書く文章は素敵なのでnoteで定期購読マガジン(サブスク)でも始めてもらえれば文章を読むために課金してもいいのだけれどね。
では。