あなたと私と世界の真ん中で。
あなたと私と世界の真ん中で。

あなたと私と世界の真ん中で。

138/1000「脱走と追跡のサンバ」筒井康隆

 

この世界からの脱走者であるおれが、正子、追跡者のいる世界からなんとか抜け出そうとするドタバタスラップスティック脱走劇。

いつのまにかおれは正子でもあり脱走者でもあり世界の創造者でもある。それぞれの内宇宙はくっついたり離れたり、状況や場面によってくるくる目まぐるしく変わる。

心の動きが世界を変えて世界が内宇宙を変えていく。結局のところ元の世界に戻るどころかどんどん内宇宙の奥へ奥へと行ってしまう。同じ景色であってもそこは別世界。

この小説は1970年にSFマガジンに掲載されたもの。当時途中から読んでました。まとめて最初から読むのは今回初めて。

47年前に書かれたものなのだけど、これはまさに今の混沌とした時代を先取りしてる。すばらしい。筒井康隆の最高傑作と言われているのも納得です。(当時のSF界の論争を知らなくても)

サンバをWikipediaでみると

サンバの踊り方は足や腰の動きを基本とし、ほとんど即興である。Bantu(バントゥー系民族)の影響であるUmbigada(ウンビガーダ)と呼ばれる、へそをくっつけあうような踊りがサンバのルーツの一つと言われる。またサンバ・ジ・ホーダにはMiudinho(ミウジーニョ)という男性が細かくステップを踏む独特な踊りもある。これらがショーロやルンドゥーなどと混ざり合い、現在のサンバと発展してきた。(Wikipedia)

とのこと。やっぱりサンバじゃなくちゃこの猥雑さを表せない。決してワルツじゃない。

現在のレイヤー化した世界では私とあなたの見る世界は全く違う。あなたの情報で見ている世界は、私の見ている景色とは全く違う。現実はただ単なる薄ぺらな世界。そんな時代に読むべき一冊。