そこが賽の河原だった。洞窟もあった。あたりには人一人いず、海には船一艘見えなかった。私は河原の岩を踏んでその洞窟に入って行った。白い涎掛けをつけたお地蔵様があり、小さな石仏があり、その前や横には幾個所にも小さな石が積み重ねられていた。蝋涙のこびりついた蝋燭の跡があり、子供の形見らしい襦袢や着物などがあった。
「忘却の河」福永武彦
山口市小鯖の禅昌寺に行ってきました。2013年に来たときと変わっていないように見えました。
本堂から奥の院への木々で薄暗い参道の途中川の流れに沿った河原にあります。
賽の河原は幼い子どもを亡くした親がその冥福を祈る場所です。
賽の河原の積まれた石に囲まれて大小の地蔵像がたっています。
写真ではかなり明るく写っていますが、実際にはその場の雰囲気もあって暗いです。明るいはずがありません。
とても静かなそして暗い昼下がり。
寺の横を流れる川からはどうどうと激しい水音が聞こえてきますが、この支流の河原はしんとして静かです。
では。